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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:03:38.07 ID:l63NseCTP

空港内の一角にあるレストラン。
大きなトランクを足下に置いて、椅子に座っている黒髪の女性がいた。

川 ゚ -゚)「久しぶりに帰ってきた。やはり日本の料理は良いな」

故郷を懐かしむように、女性は口にする。
過去の記憶を呼び起こし、心を躍らせる。

川 ゚ー゚)「私は日本へ帰ってきたぞ。君の前へ現れたら、きっと吃驚するだろうな」

直ぐそこにある未来を思い描き、女性は笑みを浮かべる。
何年も待ち望んだ、その時を──



3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:04:46.16 ID:l63NseCTP



その部屋には、猫がいた。
猫は大層苦しんでいた。


その部屋には、男がいた。
男は大層苦しんでいた。




4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:06:03.55 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「……」

四畳半の、この部屋。
僕はここにいる、昨日と同じように存在する。
神様でも何でもいい、誰か……僕を助けて下さい。

一体いつまで、僕はこんな生活を続ければいいんだ。



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:07:27.47 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「……ネットでもするお」

豆電球しか点いていてない薄暗い部屋、モニタからの朧気な光で明度が上がった。
カタカタ、とキーボードのタイピング音が響く。
モニタの画面には、求人情報のサイトが映っている。

( ^ω^)「あー、楽な仕事はないかお。そろそろ生活も厳しくなってきたお」

仕事……、僕は至って普通のサラリーマンだった。
何処にでもいる、平社員。
上司の機嫌を窺いながら媚びへつらって、汗水をたらして、営業に回っていた……



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:09:03.70 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「腹が減ったお、何か食うお」

お腹が空いた。何かを食べたい。
この一週間、僕はまともな食事をしていない。

( ^ω^)「冷蔵庫の中、ほとんど食べ物がないお」

冷蔵庫の中に食料がない、それが意味する事。
人間は食事を摂らないと死んでしまう。
詰まるところ、このままでは僕が死んでしまう可能性があるという事だ。

( ^ω^)「あり合わせでなんとかするお」


( ^ω^)「ペットの分も忘れないお」



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:11:02.00 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「ごちそうさま」

夕食はオムライスだった。
卵と米、ケチャップだけを使った実に質素な出来映えだった。
それでもまだ、食事にありつけるだけマシだ。

( ^ω^)「晩飯の後は何をするかお」



( ^ω^)「……ネットするお」

またネット。一日に何時間パソコンの前に居座っているのだろうか。
ネトゲ廃人ってやつは、半日以上もモニタと睨めっこをするらしいが……



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:12:24.60 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「あー暇だお。部屋の掃除でもするかお」

僕は首を捻り、部屋を見回した。
よく分からない雑誌、漫画、小説、捨てるべきゴミ、果ては刃物まで乱雑している。
所狭しと存在する物を片づけるのには、時間が掛かるだろう。

( ^ω^)「とりあえず、いらないものは捨てるお」

空のペットボトルや、酒瓶などを乱暴にゴミ袋へと押し込む音が鳴る。

不要な物は早めに処分するべきだ、放っておくと直ぐに貯まってしまうから。



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:15:30.66 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「こんなもんでいいお、ゴミは明日出しに行くお」

時間は30分しか経っていなかった。
部屋の様子は少しマシになったものの、依然として混沌としたままだ。

( ^ω^)「暇だお暇だお、明日のことでも考えてみるお」

……明日、僕は何をしているだろうか。
外に出て、美味しいものを沢山食べているのだろうか。
少しだけ気になっていた女性に話しかけている? いや、それはあり得ないな。

ああ、俄然として旧友に会いたくなった……ショボンは今何をしているのだろうか。
親父の酒場を継ぎたいと言っていたけど、上手くやっているのだろうか。



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:18:28.72 ID:l63NseCTP


クーは今、何をしている? 
高校時代、僕は彼女と付き合っていた。
今でも目を閉じると、鮮やかに浮かんでくる風景がある。

クーと一緒にいた時間が、僕にとって最高の幸せだった。
毎日、彼女と共にいた。彼女と笑った。彼女と泣いた。そして、彼女を抱いた。

これから先も、ずっとクーと過ごしていくのだと、その時の僕は思っていた。
それでも別れはやって来るもので、彼女の追う夢の為にそれは訪れた。

暖かい、春の日。
桜吹雪の下で交わした約束……。

( ^ω^)「……」

ごめん、あの約束は……守れそうにない。



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:19:51.50 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「昔は、楽しかったお」

( ^ω^)「普通に友達と遊んで、普通に大学を卒業して、普通に就職して……」

( ^ω^)「普通に仕事をして、そして首を切られて……」

( ^ω^)「こうして家に引きこもっているお……」

( ^ω^)「……」



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:20:48.17 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「テレビでも見るお」

ブラウン管から光が発せられ、徐々に明るくなっていく。
スピーカーからは聞き取りやすい声が、安定して聞こえてくる。
ニュース番組だ。

『昨夜、別府市で殺人事件がありました。殺害されたのは別府市のアパートに住む24歳の女性で──』

( ^ω^)「まったく、恐い世の中だお。狂人の精神は理解できないお」

ああ、本当に恐ろしい。
この世界は、犯罪者で溢れている。

『──犯人は見つかっておらず、警察は捜査を進めている模様です』



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:22:23.23 ID:l63NseCTP


『次のニュースです。一週間前から行』

プツン、とテレビの電源が切れる。

( ^ω^)「ああ、暇だお。ペットに話でも聞いてもらうお」


( ^ω^)「今はこんな体型だけど、昔はこう見えても足が速かったんだお」

( ^ω^)「中学生の頃から部活は陸上部で、短距離走者だったお」

( ^ω^)「大会に何度も出て、優勝したんだお」

( ^ω^)「国体に出たこともあるお、高校生の時だお」

( ^ω^)「充実した学生時代だったと思うお」

( ^ω^)「ねえ、結構凄いと思わないかお?」



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:23:24.36 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「……ネットするお」

先ほどから付けっぱなしになっているパソコンの電源。
電気代が勿体ないのではないか。
僕にとって、そんなことはどうでもいいのだが。

( ^ω^)「おっおっおっ」

抑揚のない笑い声が部屋に響く。
何を見ているのか?
モニターには、今流行の動画サイトが映っている。

( ^ω^)「この動画はなかなか良かったお」

( ^ω^)「最近はつまらない動画が多すぎるお」

( ^ω^)「昔の、クオリティが溢れてた時期に戻ってほしいもんだお」



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:24:27.86 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「おk、ブラクラゲット」

ガガガ、とパソコンが悲鳴を上げている。
今時ブラクラに引っかかるなんて馬鹿だ。

( ^ω^)「やっぱり、あの人が言わないとキマらないお」


( ^ω^)「おk、精神的ブラクラゲット」

画面一杯にグロ画像が敷き詰められている。
またもブラクラに引っかかるとは馬鹿だ。





17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:25:05.47 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「ネトゲするお」

ネトゲ、ネトゲ廃人……。

( ^ω^)「レベル上げに狩りするお」

ネトゲとは、非常に中毒性のあるものだ。
普通のゲームとは違って、レベルを1上げるのに膨大な時間が掛かる。
それ故、飽き性の人はすぐに投げ出し、依存症の人はのめり込むだろう。

( ^ω^)「……」

カチカチ、とマウスをクリックする音。
何かに集中すると、誰でも無口になってしまうものだ。



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:26:05.31 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「飽きたお」

時間にして1時間ほどだっただろうか。
これぐらいなら、廃人には遠く及ばない。

( ^ω^)「結局レベルは上がらなかったお」

( ^ω^)「面倒くさいお」

( ^ω^)「ネトゲは廃人のするものだお」



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:27:00.68 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「またペットに話を聞いてもらうお」


( ^ω^)「仕事を失った人間は何をすると思うお?」

( ^ω^)「新しい職を探す?」

( ^ω^)「このご時世、仕事なんて見つからないお」


( ^ω^)「バイトを始める?」

( ^ω^)「バイトの収入なんて高が知れてるお。馬鹿馬鹿しいお」



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:27:57.81 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「企業を立ち上げる?」

( ^ω^)「凡人が始めたところで、借金を抱えて失敗するのが落ちだお」


( ^ω^)「何も出来ない。全てから逃げたお……」

( ^ω^)「こんな自分は、ダメな人間だお」

( ^ω^)「弱い、人間だお」



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:28:59.94 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「暗い話になってしまったお」

( ^ω^)「昔を懐古するお」


( ^ω^)「小学生の時は、皆楽しかったと思うお」

( ^ω^)「ツン……ツンは、いつも突っ慳貪な口調だったお」

( ^ω^)「そんなツンと、よく遊んでいたお」

( ^ω^)「懐かしいお」




23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:30:01.14 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「鬼ごっこでは、自分が鬼になるのはジャンケンで負けた時だけだったお」

( ^ω^)「運動会では、毎年リレーのアンカーだったお」

( ^ω^)「徒競走では常に1位だったお」


( ^ω^)「性格も明るくて、喋るのが好きで、皆の人気者だったお」

( ^ω^)「……」

( ^ω^)「過去ばかり顧みるのはいけないことかお?」


( ^ω^)「未来のことなんて考えたくないんだお」

未来……僕に待ち受けるのは明るい未来か、暗い未来か。
そんなことは分かり切っている。
後者だ。



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:31:09.09 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「そろそろ、シャワー浴びるお」

僕は何日も風呂に入っていない。
気持ち悪い。非常に不快だ。
湯船に張ったお湯で、身体の垢を洗い流したい。


( ^ω^)「お風呂お風呂~」


…………
………
……



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:32:37.28 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「ふぅ、さっぱりしたお」

( ^ω^)「お風呂の後は牛乳を……」

( ^ω^)「牛乳はなかったお。水で我慢するお」

腰に手を当て、コップに注がれた水を飲み干す姿は中年のオヤジのようだ。
下半身にバスタオルを巻いただけで、三段腹が醜い。
所謂、メタボリックシンドロームというやつだろう。

( ^ω^)「ふぅ……」

( ^ω^)「うーむ、腹が出てるお。ダイエットでもした方がいいのかお」



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:34:15.33 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「さて、歯も磨いたしそろそろ寝るかお」

一日が終わる。
状況は何も変わらずに終わろうとしている。
明日は、明日こそは……。

( ^ω^)「おやすみだお」



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:35:08.23 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「──! ────!!」

(*^ω^)「──────!」

( ^ω^)「────」

( ^ω^)「────」


……。




28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:36:27.15 ID:l63NseCTP


目が覚める。朝だ。
初めに空腹を覚える。ろくに食事を取れていない所為だ。
次にどうして自分が此処にいるのか考える。

そして最後に、絶望する。

( ^ω^)「……朝だお」

( ^ω^)「また一日、無為な生活が始まるお」

( ^ω^)「ああ虚しい」


( ^ω^)「何か食べるお」

朝食。飢えに苦しむ僕は、何でもいいから食べたかった。

( ^ω^)「食パンが一枚残ってたお、バター塗って食べるお」

( ^ω^)「もぐもぐお」





30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:38:09.28 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「……」

クー、君に会いたい。
アメリカへと渡ってしまった君はどうしている?
元気にしているだろうか、事故で怪我などはしていないだろうか。

病気で寝込んだりはしていないだろうか、少し心配だ。
でも君の性格からして、体調管理は整えられているだろうから大丈夫か。


( ^ω^)「散歩でも行くお」


熱心に仕事をしている姿が思い浮かぶ。
長い黒髪を風に受けて、黒のスーツを着こなす姿が。
この想像は、あながち間違っていないと僕は思う。

クーは、何でも出来る凄い人だから。



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:40:20.95 ID:l63NseCTP


彼女は黒が似合う女性だった。
図書室で初めて彼女を見た時、その長く黒い髪に目を奪われた。
おまけに、とんでもない美人だった。

あの日、クーの正面に位置する席に座った。
僕は根暗な人間だから、昼休みは図書室で読書をしようとしたんだ。

そして、彼女は小説を読んでいる僕に声を掛けてきた。
話しかけられるなんて、まったくもって思っていなかった。

僕の読んでいる小説が大好きだったらしい。
彼女は思っていることを素直に伝えるタイプで、どんな相手でも話しかける。
だからその後、僕は彼女と小声で会話を交わした。図書室だから小声でね。

顔が近かったから、それは緊張した。



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:42:13.07 ID:l63NseCTP


小説の話ですっかり意気投合した僕たちは、図書室以外でも会うようになった。
波長が合ったのか、それから僕たちはお互いに惹かれあった。
僕は勇気を出して、クーに告白をした。OKの返事をもらえた時は、そりゃ幸せだった。


花見に行った。

遊園地に行った。

映画館へ行った。

海へ行った。

お祭りに行った。

花火を見に行った。

紅葉狩りに行った。

温泉に行った。

スノーボードをしに行った。


春から冬、二人で多くの場所を訪れた。





34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:44:25.34 ID:l63NseCTP


どの思い出も、忘れることは出来ない。
クーと過ごした時間が、僕の大切な宝物なんだ。
クーの笑顔が、いつもはクールな彼女の見せる、泣いたり怒ったり照れたりする表情が、

僕の心に焼き付いている。


たったの1年間。
それが、僕の彼女と過ごした時間。

再会を誓って、僕たちは離ればなれになった。



35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:45:22.21 ID:l63NseCTP


僕は今でも待ち続けている。
彼女が帰ってくる日を。
愛しい彼女を。


( ^ω^)「ただいまだお」


あれから8年。
クーはまだ帰ってこないのかな。
ああ……こんな状態じゃ確認の仕様がない。



36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:48:09.96 ID:l63NseCTP


夜になった。窓からは幽かな月光が差し込んでいる。
お腹が空いた。夜だけしか僕は食事が取れない。

( ^ω^)「晩ご飯は……」

( ^ω^)「もう米と味噌しか残ってないお」

( ^ω^)「我慢して食べるお」


( ^ω^)「ペットの分も忘れないお」



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:49:32.50 ID:l63NseCTP


僕は夜が嫌いだ。夜は嫌いだ。

( ^ω^)「ペットに話でも聞いてもらうお」


( ^ω^)「昨日、ツンのことは話したおね?」

( ^ω^)「俺は高校1年生の時、ツンと付き合うことになったんだお」

( ^ω^)「小学校からずっと一緒だったんだお、そりゃこっちも好感は持ってるわけで」

( ^ω^)「告白されたんだけど、それがまた笑えるんだお」

( ^ω^)「あんたがどうしてもって言うんなら、付き合ってあげてもいい」

( ^ω^)「ある日出し抜けに、そんなことを言ってきたんだお」

( ^ω^)「あえてそこは、どうしても付き合いたいって返しておいたお」

お前の事なんかどうでもいい、やめてくれ……。




39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:52:48.21 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「大学生になるまで、俺たちは恋人同士だったお」

( ^ω^)「大学生になってからツンは、事ある毎に文句を付けてきたお」

( ^ω^)「俺は段々ツンのことが鬱陶しく思えてきたお」

( ^ω^)「で、仲の良かった男友達に相談してたんだけど」

( ^ω^)「実はそいつがゲイだったんだお」

( ^ω^)「そいつは女の子よりも綺麗な顔立ちだったお」

( ^ω^)「こんなに綺麗ならいいかなと思って、俺は誘われるままそいつと交わったお」

( ^ω^)「それ以来、ツンとは交際を絶ちきって、俺はバイになったお」

そんなこと知るか、胸糞悪くなってくる。
この奇人め。

( ^ω^)「ゲイじゃなくてバイだお、そこ勘違いしないでくれお。女の子も好きだお」

だからなんだ、男同士で抱き合って何が良いんだ気持ち悪い。
僕にはそんな趣味なんかない。



40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:55:27.94 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「じゃあ俺はシャワー浴びてくるお」

ああ、どうして僕はこんな所にいる?

一週間前だったか……会社から家に帰る途中、頭に衝撃があった。
それからのことは覚えてない。
気が付いたら、手足を縛られ猿轡をかまされた状態でこの部屋にいた。

一週間、それは僕にとって地獄の時間だった。

朝、昼は飯を食べることも出来ず。
夜になれば、あの男に延々と話しかけられた。
寝る前には、あの気持ち悪い男に身体を触られた。

こんな生活が続くなら、いっそのこと死んだ方がマシだ。



41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:56:06.52 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「ふぅ、さっぱりしたお」

( ^ω^)「歯を磨いて寝るお」

もう、嫌だ。
誰でもいい、誰か、助けてくれ。
僕を、助けてくれ。



42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:57:04.29 ID:l63NseCTP


( ^ω^)「そうだ、今日は身体を拭いてあげるお」

僕は猿轡を外された、口が圧迫されていると呼吸がしづらくて堪らない。
一日に口が解放されるのは、飯の時とこの時間だけだ。

('A`)「……死ね」

呪い殺すかのように思いを込めて、今まで溜めてきたものを吐き出す。

('A`)「お前みたいな下種野郎は死ね」

奴は僕の服をはだけさせ、濡れたタオルで身体を擦り始めた。

('A`)「死んでくれ」

気持ち悪い、気持ち悪い。
僕の身体に触れるな、気持ち悪い。

(*^ω^)「おっおっおっ」



43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:58:06.98 ID:l63NseCTP


('A`)「もうやめろ、やめてくれ。気持ち悪い」

執拗に下半身を擦ってくる男に向かって言った。

( ^ω^)「なに……?」

こいつは手を止めて、疑問符を浮かべた。
僕は言葉を続ける。

('A`)「気持ち悪いんだ、吐き気がする。僕はお前みたいな人間が大嫌いなんだよ」

( ^ω^)「気持ち悪い……? 誰が?」

('A`)「お前以外に誰がいる。お前ほど醜く、気持ち悪い人間は他にいない」

('A`)「毎晩毎晩、僕の身体を触って気持ちが悪い。死んでくれ」


(  ω )「……」

男は黙り込んでしまった、一体なんだというのだ。



45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:59:26.58 ID:l63NseCTP


(  ω )「……ぉ」

('A`)「は?」

(  ω )「……ないお」

('A`)「なに?」

( ゜ω゜)「気持ち悪くなんかないお」

( ゜ω゜)「愛があればなんだっていいんだお、愛の形は人それぞれなんだお。俺は君が可愛いと思ったからこうして接しているんだお。男同士だって女同士だって何も問題はないお。何が気持ち悪いっていうんだお、愛は綺麗なものなんだお」

( ゜ω゜)「お前に分かるかお、同じ部署の人間に後ろ指を指されて罵られる人間のことが、隠していたことがバレて、掌を返したように冷たい態度を取られて自主退職にまで追いやられた人間のことが!」

コイツは、何を言っているんだ。
僕の理解の範疇を超えている。
分からない、僕には分からない。

ただし、1つ分かることがある。
僕はコイツの逆鱗に触れてしまったようだ。

感情に身を任せて、今まで溜め込んできた思いをぶつけた。
冷静になって考えてみれば、身動きの取れない僕は彼を怒らせるべきではなかった。
今更そんなことを思っても、もう遅い。

だって、こいつの手には包丁が……



46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 23:01:00.38 ID:l63NseCTP


ごめん、クー。

あの時の約束は守れない。

クー、僕は、君を愛している。

僕のことは忘れて、幸せに生きてくれ。

それが僕の、人生で最後の願いだ。



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 23:01:57.77 ID:l63NseCTP


***


春の日が照る桜坂。

桃色の花びらを髪に纏い、二人は顔を向き合った。

川 ゚ -゚)「ドクオ、私が帰ってくるまで待っていてくれるか?」

長い髪を風に揺られ、女性は男に問いかける。

('A`)「勿論だ。たとえ10年経とうとも、僕は君を待ち続ける」

女性の目を見つめながら、男はここに約束した。


***






            ( ^ω^)バイのようです ─ 完 ─




49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 23:04:26.03 ID:l63NseCTP


あとがき


バイ、ラテン語で2の意味を持ちます。
バイ、バイセクシュアルの略。

二つの意味で使っています。

ありがとうございました。

バイバイ。





  
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